本書の帯には、「近現代神道史に確かな礎を築く 神社に関する法制度・行政の変遷を実証的に考究。 未開拓の分野に果敢に挑んだ貴重な成果。」と謳われています。
本書は、一般の人が手に取るには、「法制的研究」というだけで敬遠されるかもしれません。
しかし、手に取り、じっくりと読み進めていくと、新進気鋭の近現代を主とする神道史の研究者としての一面、また日々神明奉仕に身を置く神職としての一面からの著者視点で、まさにこの書を著したことに気付かされます。未開拓とされる分野に挑んだ著者の熱意を感じるためにも、一章ずつ、近代神社史を繙くように、或いは著者の神社へのまなざしを感じながらお読みください。
目次
序章 近現代神道史における法制度の重要性
一 はじめに
二 神道史における近代と現代の歴史的区分
三 神社の明治維新
四 制度研究の重要性
五 「国家神道」に関する問題
六 法制研究の課題
七 本書の構成
八 おわりに
第一編 国家の宗祀と公認神社
第一章 神社行政における「国家ノ宗祀」
一 はじめに
二 神社の国家管理に関する制度
三 神職任用に関する制度
四 奉務規則
五 敬神思想の普及
六 神社制度調査会と神社経済
七 神社整理から見る行政の神社観
八 「神社の本質」問題
九 神祇院の発足
十 おわりに
第二章 御祭神に関する神社制度―別格官幣社配祀神 殉難戦没之将士を例として―
一 はじめに
二 公認神社の誕生
三 御祭神に関する神社制度
四 「帝国の神祇」の範囲
五 配祀神の定義
六 別格官幣社藤島神社列格まで
七 藤島神社の列格
八 名和神社・菊池神社の列格と配祀神
九 「殉難戦没之将士」の範囲と配祀神の取扱
十 おわりに
第三章 神社整理と無格社の法的性質及び実態
一 はじめに
二 神社整理に関する法令
三 神社整理の目的と基準
四 無格社発生の背景と法的性質
五 無格社に対する恩典の差
六 昭和期における無格社及び非公認神社の実態について
七 明治末期における無格社の実態
八 神祇院の「無格社整備ニ関スル要綱」の特色
九 おわりに
第四章 私祭神祠の法的性質
一 はじめに
二 公認神社の発生
三 非公認神社
四 「私祭神祠」の条件と神社類似施設
五 神社制度調査会と無格社整理
六 神祇院による「私祭神祠」の方針転換
七 私祭神祠等の取締
八 おわりに
第五章 補論 邸内社の法的性質―現代の政教問題を論じる上での近代神社行政研究の意義―
一 はじめに
二 邸内社の慣習
三 近世における邸内社の管理
四 近代における邸内社の管理
五 神社行政概説書から見る邸内社の行政上の取り扱い
六 公認神社に非ざる祭祀施設
七 現在における邸内社の判断基準
八 現行法上における邸内社の性格
九 おわりに
第二編 鎮守の森の近代化
第六章 近代神社境内地の形成―上知令・山林・租税・公園―
一 はじめに
二 上知令と地租改正
三 境内地の管理と租税
四 鎮守の森の官有地化
五 風致林野と神体山
六 神社公園の発生
七 神社公園の問題
八 おわりに
第七章 上地事業における境内外区別
一 はじめに
二 先行研究
三 上知令の発令とその背景
四 上知令直後の境内外区別
五 地種の整備
六 地租改正中の境内外区別
七 京都府における実例
八 おわりに
第八章 神社境内の公園的性格
一 はじめに
二 太政官公園の成立と神社境内
三 神社境内の公園化
四 神社林と神苑
五 おわりに
第九章 東京府における太政官公園と神社公園の成立
一 はじめに
二 いわゆる太政官公園について
三 公園制度発足以前
四 東京府における公園設置方針
五 東京府の公園維持運営法
六 おわりに
第十章 近代神社林制度の変遷
一 はじめに
二 明治初期(上地事業)
三 風致林野
四 境内地跡地の処分
五 明治神宮御造営の影響
六 昭和期の神社行政における神社林観の変化
七 おわりに
第十一章 神体山の制度的沿革―「神体林」の神道史上の意義について―
一 はじめに
二 上地事業の経緯と神体山
三 事例(一)大神神社
四 事例(二)諏訪大社
五 事例(三)松尾大社・伏見稲荷大社
六 事例(四)金鑽神社
七 上地事業に於ける「神体山」の判定基準
八 「神体山」に関する研究の深化
九 「神体林」
十 神体山に対する特例措置(秋葉山の事例)
十一 おわりに
終 章 近現代神道史研究の課題と展望
一 はじめに
二 「国家ノ宗祀」の研究と課題
三 神社明細帳
四 神社経済と運営護持
五 私祭神祠の問題
六 近代的神職
七 近代境内の形成
八 神社林をめぐる議論
九 神社の公共性
十 神道教学上の検討課題
十一 おわり
以上
なお、本書は一般書籍として弘文堂より販売されています。(本体5000円+税)