神道文化叢書第42輯 『近現代神道の法制的研究』 河村忠伸著の刊行

 本書の帯には、「近現代神道史に確かな礎を築く 神社に関する法制度・行政の変遷を実証的に考究。 未開拓の分野に果敢に挑んだ貴重な成果。」と謳われています。

本書は、一般の人が手に取るには、「法制的研究」というだけで敬遠されるかもしれません。

しかし、手に取り、じっくりと読み進めていくと、新進気鋭の近現代を主とする神道史の研究者としての一面、また日々神明奉仕に身を置く神職としての一面からの著者視点で、まさにこの書を著したことに気付かされます。未開拓とされる分野に挑んだ著者の熱意を感じるためにも、一章ずつ、近代神社史を繙くように、或いは著者の神社へのまなざしを感じながらお読みください。

目次

序章  近現代神道史における法制度の重要性

  一 はじめに
  二 神道史における近代と現代の歴史的区分
  三 神社の明治維新
  四 制度研究の重要性
  五 「国家神道」に関する問題
  六 法制研究の課題
  七 本書の構成
  八 おわりに

第一編 国家の宗祀と公認神社

 第一章 神社行政における「国家ノ宗祀」

  一 はじめに
  二 神社の国家管理に関する制度
  三 神職任用に関する制度
  四 奉務規則
  五 敬神思想の普及
  六 神社制度調査会と神社経済
  七 神社整理から見る行政の神社観
  八 「神社の本質」問題
  九 神祇院の発足
  十 おわりに

 第二章 御祭神に関する神社制度―別格官幣社配祀神 殉難戦没之将士を例として―

  一 はじめに
  二 公認神社の誕生
  三 御祭神に関する神社制度
  四 「帝国の神祇」の範囲
  五 配祀神の定義
  六 別格官幣社藤島神社列格まで
  七 藤島神社の列格
  八 名和神社・菊池神社の列格と配祀神
  九 「殉難戦没之将士」の範囲と配祀神の取扱
  十 おわりに

 第三章  神社整理と無格社の法的性質及び実態

  一 はじめに
  二 神社整理に関する法令
  三 神社整理の目的と基準
  四 無格社発生の背景と法的性質
  五 無格社に対する恩典の差
  六 昭和期における無格社及び非公認神社の実態について
  七 明治末期における無格社の実態
  八 神祇院の「無格社整備ニ関スル要綱」の特色
  九 おわりに

 第四章 私祭神祠の法的性質

  一 はじめに
  二 公認神社の発生
  三 非公認神社
  四 「私祭神祠」の条件と神社類似施設
  五 神社制度調査会と無格社整理
  六 神祇院による「私祭神祠」の方針転換
  七 私祭神祠等の取締
  八 おわりに

 第五章 補論 邸内社の法的性質―現代の政教問題を論じる上での近代神社行政研究の意義―

  一 はじめに
  二 邸内社の慣習
  三 近世における邸内社の管理
  四 近代における邸内社の管理
  五 神社行政概説書から見る邸内社の行政上の取り扱い
  六 公認神社に非ざる祭祀施設
  七 現在における邸内社の判断基準
  八 現行法上における邸内社の性格
  九 おわりに

第二編 鎮守の森の近代化

 第六章 近代神社境内地の形成―上知令・山林・租税・公園―

  一 はじめに
  二 上知令と地租改正
  三 境内地の管理と租税
  四 鎮守の森の官有地化
  五 風致林野と神体山
  六 神社公園の発生
  七 神社公園の問題
  八 おわりに

 第七章 上地事業における境内外区別

  一 はじめに
  二 先行研究
  三 上知令の発令とその背景
  四 上知令直後の境内外区別
  五 地種の整備
  六 地租改正中の境内外区別
  七 京都府における実例
  八 おわりに

 第八章 神社境内の公園的性格

  一 はじめに
  二 太政官公園の成立と神社境内
  三 神社境内の公園化
  四 神社林と神苑
  五 おわりに

 第九章 東京府における太政官公園と神社公園の成立

  一 はじめに
  二 いわゆる太政官公園について
  三 公園制度発足以前
  四 東京府における公園設置方針
  五 東京府の公園維持運営法
  六 おわりに

 第十章 近代神社林制度の変遷

  一 はじめに
  二 明治初期(上地事業)
  三 風致林野
  四 境内地跡地の処分
  五 明治神宮御造営の影響
  六 昭和期の神社行政における神社林観の変化
  七 おわりに

 第十一章 神体山の制度的沿革―「神体林」の神道史上の意義について―

  一 はじめに
  二 上地事業の経緯と神体山
  三 事例(一)大神神社
  四 事例(二)諏訪大社
  五 事例(三)松尾大社・伏見稲荷大社
  六 事例(四)金鑽神社
  七 上地事業に於ける「神体山」の判定基準
  八 「神体山」に関する研究の深化
  九 「神体林」
  十 神体山に対する特例措置(秋葉山の事例)
  十一 おわりに

終 章 近現代神道史研究の課題と展望

  一 はじめに
  二 「国家ノ宗祀」の研究と課題
  三 神社明細帳
  四 神社経済と運営護持
  五 私祭神祠の問題
  六 近代的神職
  七 近代境内の形成
  八 神社林をめぐる議論
  九 神社の公共性
  十 神道教学上の検討課題
  十一 おわり                  

以上

  なお、本書は一般書籍として弘文堂より販売されています。(本体5000円+税)